年月の経過とともに、緑に埋もれ、森の中に還っていくよう
に設計されたカンダラマホテルは、バワ唯一の内陸のリゾ
ートであり、彼の代表作のひとつだ。外部に面し、岩肌がむ
き出しになったフロント、湖と一体化しているように見える
メインプール──。リゾートの至るところに、バワ“らしさ”
が息づいている。建築にあたり、ヘリコプターを飛ばし、土
地探しから参加したバワだったが、貯水池の環境問題など、
建築を反対する声も少なくなく、完成までの道のりは容易
ではなかった。しかし、その“障害”こそが、968メートルにま
で渡る線状に伸び、ジャングルに埋没するかのような建物、
天然の岩をくり抜いてつくったロビーと、ほかに類を見ない
ホテルの誕生を導いたのである。通路に無造作に置かれた
ようにみえる椅子も、ゲストが景色を堪能する。ただ、それ
だけのために、実は綿密な計算のもと配されたものだ。風の
音と緑の薫りに、身を委ね、自然との調和に酔いしれたい。


深い森と青い湖に囲まれたカンダラマホテルは、年々、深い緑に覆いつくされていくように設計されている。1994
年建築。