建築物は、エネルギーの中心地であれ



(左)イスタンブールの世界遺産『アヤソフィア』の前にも豊かな緑と水が溢れる庭園が設置されている。(右上)僻地の中の僻地、アフ
ガニスタンのバンデアミール湖にも水と庭園を基本としたコミュニティーが存在する。(右下)モロッコのマラケシュで撮影した一般
的な宿。中庭が憩いのスペースとして機能している。
イスラーム建築には中心が定められている。そ
れは中庭である。イスラームの聖典『クルアー
ン』では、死後の楽園についてたびたび書かれ
ていて、その楽園を体現したものが庭園(特に
中庭)とされている。庭園というと、緑と水が主
な構成要素。イスラームの教えがこのふたつを
最重視したことは、多くの街や村が砂漠に取り
囲まれていることを考えると想像に容易い。そ
の教えをスペインのアルハンブラ宮殿など巨
大なものから、経済的に困窮している国の僻地
にあるモスクまで必ず守っているのだ。必然的
にモスクは水の出る場所、つまり将来的には街
の中心となる場所に建てられていった。また、モ
スクを中心に広がった各々の住宅でも中庭を
最重視。共同スペースとして家族や住人の集う
場所となり、水場や緑が置かれた憩いのスペー
スとなっていることが多い。つまり、イスラーム
社会とはモスクを中心に発達した銀河のよう
な社会システムなのである。