
「未病を治す」(いまだ病まざるを治す)ことを目標として古来から愛用されてきた薬酒。

薬酒の世界
Text Hidenobu Shibata
セルフメディケーションとしての薬酒
ビタミン、レシチン、ペプチド、カムカム・・・。世はサプリメント全盛で、健康こそが一大関心事といった感がある
が、自分の健康は自分で守る、そんなセルフメディケーションのための薬としていま改めて注目されているの
が「薬酒」だ。アルコールに薬草類(生薬)を浸して造られるが、その起源は数千年も前に溯るという。なるほど先
人たちは酒と生薬を一つにする利点や特徴をよく捉えていた。アルコールの作用によって、生薬に含まれてい
る薬効成分が自然に近い状態で浸出するし、その成分はアルコールと一体になっているので体内によく吸収さ
れる。何より酒だけに楽しみながら飲用できる。もっとも昔は、酔いは神聖なものとしてとらえられ、酒は今日の
ように酔うための飲み物ではなく、貴重な医薬だったが・・・。アルコールと生薬の相乗効果によってさまざまな
効用をもつ薬酒は、時代の変遷を超えていまなお人々の営みを支えているのだ。