
輪島市に本店をおく「輪島屋善仁」の八代当主・中室勝郎氏が復元した塗師の家。200坪ほどのそれは、現在、「日
本で最も美しい漆の町家」と高い評価を得ている。かつて輪島には塗師の家が200軒以上あったというが、現在
はここを含めわずか数軒のみとなった。
それに加え、輪島独特の商法として「塗師」と呼ばれる
親方が、漆器を日本各地に直接売り歩くという販売方
法も、輪島塗が広く知られるようになった大きな要因
である。塗師は職人達をとりまとめ、つくる商品を決め
る、いわばプロデューサーであっただけでなく、商品を
得意先に売り、あるいは新しい顧客を開拓したりとい
う営業マンでもあったのだ。顧客との密な付き合いで、
そのニーズをつかみ、また全国を歩いて見聞を広めた
塗師は、「売れる」商品が何かを的確に捉え、職人たち
に伝えていた。それがまた、輪島塗を多くの人に愛用
され、重用される漆器に育て上げたのだった。