能の古典物語《楊貴妃》をベースに男女の関係を隠喩的に描
いた"Vita Nova"(2003)、子をさらわれた母親が主人公の古
典悲劇《隅田川》を題材にした"Interfuit"(2004)を制作。い
ずれも、ダンサーの動きをダイナミックかつ繊細なカメラ
ワークで捉え、生身の人間の美しさ、悲しさ、儚さ、強さを表
現。かつ音楽がもたらすリズムと音でストーリー性をもた
らしている。8歳から能管を一噌庸二師(一噌流十四世家元)
に師事、16歳から仕舞・謡曲を泉康孝師(勧世流シテ方)に師
事し、能の美しさに惹かれてきたという彼女。「小さい頃、私
が想像していた物語や、神様、自然の神秘性を、具体的に映
像として目で見れる形にしたかった。一番の幸せは、カメラ
の小さな液晶画面で映像を見るとき。自分の手のひらの中
に物語が入っていると思うと得もいえない喜びを感じる」。
2004年には《松風》を土台にした"S"もパリ日本文化会館で
上演された。


(上)Vita Nova2003/20min(下)Interfuit2004/20min