ガラスなどの素材を多用する彼の建築は、透過と反射が
交錯し刻々と変化する映画を想起させる「映像的な建築」、
また空間に溶け込んで見えることから「V a nis hin g
Architecture(消失する建築)」とも呼ばれている。ヌー
ヴェルは、これらの作品で「はかなさ」が感じられるように
試みたと語る。「はかないものが、かえって生き生きとする。
そのひとときに永遠を感じるのです」。光の表現はさらに
進化を遂げる。2005年、スペイン・バルセロナに出現したア
グバールタワーは人々の度肝を抜いた。赤や青のタイル
をちりばめた構造体をガラスのルーバーで包み込んだ弾
丸形タワー。昼はモザイク建築のように光を乱反射し、夜
はLEDが幻想的な姿を浮かび上がらせる。


(左)高さ144mのアグバールタワーはバルセロナ水道局が発注。ヌーヴェルは、水の形と近郊の山モンセラートをイメージ
したという。(右)タワー表面でガラスのルーバーが開閉し複雑な表情を見せる。Photo by Philippe Ruault