


(上)北京の胡同と同じく修復が徹底的に成された雲南省の大理。土産物屋とレストランが延々と続く。(左)生き残りが約束され
ていない上海中心部の古い街並。ただ、老朽化は大きな問題である。(右)修復が進む北京の胡同。敷地内に入ると昔ながらの風
合いが残る。
消えゆく下町と建築
「古き良きものは残すべきだ」ということに、日本人は
最近になって気付くことができた。特に歴史的風格を
持つ建築物は、取り壊してしまうと二度と元に戻らな
い。大切な街並や建物は、歴史や風土を活かした設計
によって保存されるべきものなのだ。中国もまったく
同じ問題を抱えていると言ってよいだろう。地方はも
とより都市部にも残る古い街並は、いまや風前の灯で
ある。この危機的状況に諸外国から「もったいない!」と
待ったが入ったことで、中国の行政も方向転換し始め
た。北京の鼓桜に近い胡同(フートン)が代表的な例な
のだが、大規模な整備事業によって残されることが明
確になったのだ。ただ、この修復工事、「残すからには
観光客を誘致したい」という力みが相当に入っている。
レンガやブロックは直角に切り出された新品で、歴史
に思いを馳せる暇のないショッピングゾーンとなって
いる。下町が生き残るのは、かくも難しい課題なのだ。