世界のデザイン界が、エコな造形美の一具現例として日本
の伝統文化に関心を寄せる今、日本の伝統技術に着目し、世
界に発信し続けて来た喜多俊之が提示する作品群のメッセ
ージと手法は、今後のワールドスタンダード足り得るとい
っても過言ではないだろう。「本来、日本は伝統的にエコな
文化。先人の知恵と文化的な財産に現代的なテクノロジー
をいかに加味してゆくか、ということは、世界的にも今後大
きなテーマとなってゆくことでしょう。自然とテクノロジー
によって生かされている現代人、そして自らもふくめた日本
のデザイナーや産業界は、このテーマへの明確な回答を提
示する義務があると思うのです。」ハイテクという、一見、伝
統文化とは相容れない性格の概念に関しても、彼の取り組
み方はあくまで自然だ。「最新のテクノロジーを一皮むいた
ら伝統技法、またその逆もしかり」と述べる通り、和紙で作
ったランプシェードを一皮むけば、現代技術のかたまりの
ダイオードが光源として現れる。あくまで未来指向。喜多デ
ザインの真骨頂だ。




シンプルななかにも遊び心が見え隠れする北山杉材を使用した箱や棚、和紙が立体となった照明。機能主義に徹
した結果、デザインの画一化を招いたバウハウス運動等とは確実に一線を画す『かろみ』の境地だ。