
先鋭と史実が出会う必然性 ロンドン
Photograph Yukiko Maie Text Hiroshi Urata
銀色に輝く英国の美しき系譜
剥き出しの配管類に多用されたガラス、何よりもギラリと
輝くメタリックな外装。写真で見る限り、伝統的な英国の
街並に馴染むことはなさそうな"ロイズ・オブ・ロンドン"
だが、事実は異なる。これほど英国らしい現代建築は、他に
はない。現地を訪れると、誰もが剥き出しに設置された全
面ガラスのエレベーターに目を奪われる。不定期に上下動
する様子は見ていて飽きることはない。続いて、細部にま
で「機械」というテーマを基調にしたデザインがなされて
いることにも気付く。蒸気機関へのこだわりが脳裏に浮か
ぶ。また、内外装ともに一定の幅で柱が配されていること
にも注目したい。力強く伸びた柱は天井にまで到達し、補
強構造が装飾そのものになっている。そう、これは教会な
どで見られるゴシック建築の手法そのものなのだ。ロイズ
・オブ・ロンドンは、世界の歴史の中に、その名を記してき
た英国の歴史が封じ込められた現代建築なのだ。


(左)近未来を連想させるロイズ・オブ・ロンドンの姿。夜には青く鈍く光りだす。(右)メインエントランスにも、細部にまで「機
械」のメタファーが徹底されている。